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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(あ)1111号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人両名弁護人関藤次、同渡辺泰敏の上告趣意第一点について。

しかし、所論刑訴三二一条一項二号但書の規定は、検察官の面前における供述を録取した書面を証拠とするには、先ず公判準備又は公判期日において刑事被告人に対し該書面の供述者を審問する機会を充分に与えたことを前提とするものであり、現に本件においても第一審裁判所は所論検察官の作成した各供述調書の供述人根本三郎、同川上重之介をその公判廷(被告人両名の出頭している)において訊問し、被告人両名にも同証人等をそれぞれ審問する機会を十分に与えていること、記録上明らかであるから、原判決の説示は何等憲法三七条二項の法意に反するところがない。されば論旨は単なる訴訟法の解釈を誤ったとの主張に帰し、明らかに刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらない。また該書面の供述が公判準備又は公判期日における供述よりも信用すべき特別の情況存するか否かは結局事実審裁判所の裁量に任かされているものと解するを相当とするから原判決の説示は正当であるというべく、従って本件は同四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第二点について。

所論第一審判決に示す第二の事実の認定は被告人小森善助の自白の他に相被告人栗原寅三の供述を証拠としてなされていること判文上明らかであって、右認定がこれ等の証拠によってたやすく肯認しうるところであり、その間反経験則等の違法もないから、第一審判決は不利益な自白を唯一の証拠として被告人を有罪にしたものではない。されば、所論違憲の主張はその前提を欠き刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらないし、同四一一条を適用すべきものとも認められない。

よって刑訴四〇八条に従い裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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